個人、チーム、組織の各レベルで影響を測定
「心理的安全性」という言葉は1960年代に作られましたが、今日私たちが知っているコンセプトは、ハーバード・ビジネス・スクールのリーダーシップ&マネジメントのエイミー・エドモンドソン教授によるチーム学習に関する研究に由来しています。エドモンドソン教授によると心理的安全性は次のように定義されます:
「チーム内の対人関係において、アイデア、質問、懸念、ミスを発言しても罰せられたり恥をかかされたりすることなく、リスクを取っても安全であると信じられること」。 1
エドモンドソン教授らは、心理的安全性によっていかにチームが高いパフォーマンスを発揮できるようになるかを実証しています。例えば、心理的安全性が高いチームは、学習行動が高く、従業員のエンゲージメントとモチベーションが高く、意思決定も優れていると報告されています。つまり心理的安全性が高い環境では、より協力的でインクルーシブな文化が生まれるということです。質問したり、新しいアイデアを提案したり、失敗から学んだりすることが奨励されるようなチーム環境をマネジャーが作ることで、メンバーも対人関係のリスクを取ることができるようになるからです。2
コーン・フェリーの調査は、このような研究成果を強く裏付けるものになっています。225のグローバル組織、約100万人の従業員を含むコーン・フェリーのエンゲージメント調査データベースから最近編集されたデータによると、心理的に安全な環境と従業員のエンゲージメントには明確な相関関係があります。
職場で自分らしくいられると感じている従業員は、そうでない従業員よりもエンゲージメントが高く(94%対51%)、同様に、否定的な結果を恐れることなく自由に意見を述べることができると回答した従業員は、そうでない従業員よりもエンゲージメントが高いのです(85%対34%)。さらに、心理的安全性と従業員の継続勤務意向にも関係性があるようです:
しかし、ある人にとっては心理的に安全だと感じても、他の人にとっては安全だと感じない場合もあります。
コーン・フェリーのエンゲージメント調査データベースによると、心理的安全性に関連する6つの項目について、少なくとも63%が「そう思う」または「強くそう思う」と回答しています。一見ポジティブに聞こえるかもしれませんが、詳細に見ていくと回答者の属性によって異なるストーリーが浮かび上がってきます。以下は、その差異の一例です:
これらの結果を踏まえ、コーン・フェリーは心理的安全性の定義において、多様性の重要性を強調することにしました:
"自分の属性に関係なく、反発を恐れずに自分らしくいられ、組織に貢献できること。"
コーン・フェリーの心理的安全性指標
では、心理的安全性はどのように測定するのでしょうか。従来、心理的安全性はチームレベルで測定されてきましたが、コーン・フェリーでは「自己」「チーム」「組織」の3つの側面から測定します。それぞれ以下のことを測定します:
自己:批判を恐れずに自分らしく自由に発言できる、と個人が認識しているか。
チーム:チームメンバーがお互いにサポートを提供し合い、本来の自分らしくいられる心理的安全性のある環境を作っている、と個人が認識しているか。
組織:組織が心理的安全をサポートするプロセスを適切に示し、作り上げている、と個人が認識しているか。
このように心理的安全性を測定することで、リーダーは一歩立ち止まって、従業員、チーム、そして組織が成功するためにどのような手段を講じればよいかを理解することができます。例えば、組織レベルでの心理的安全性の指標の1つは、従業員が不当な扱いに関する苦情を処理するプロセスが信頼できると感じられているかです。この指標を人種/民族グループ別に見ると、いくつかの乖離が見られます:
性別や性的指向によっても同様の乖離が見られます:
そして、ほぼすべての指標において、マネジメント・レベル別に分類すると、トップマネジメントから非マネジメントになるほどスコアが低くなる傾向が見られました。このことは、同じ組織のリーダーと従業員では、心理的安全性に関する経験が大きく異なっていることを裏付けています。企業における心理的安全性に関する人々の見解を理解するためには、あらゆるレベルの声を反映させる必要があるのです。
私たちの調査結果は、個人、チーム、組織によって心理的安全性の感じ方は大きく異なるため、総合的に測定することは致命的だということを示しています。人材の属性でくくることも同様です。
コーン・フェリーの提供ソリューション
測定:コーン・フェリーのPsychological Safety Indexは単独でも、DE&I測定ツールKorn Ferry DE&I Compassの一機能としても実施でき、個人、チーム、組織の各レベルにおける心理的安全性の認識に関する定量的なインサイトを提供。
ワークショップ:結果を分析し、アクションステップを決定。
コーチングとトレーニング:チームレベルでの心理的安全性の育成方法を提供。
戦略策定:組織レベルでの心理的安全性を高め、設計するための戦略を策定。
ジャスト・イン・タイム アプリ:マネジャー向けツール。
1 https://amycedmondson.com/psychological-safety/
2 Carmeli A, Brueller D, Dutton JE. (2009). “Learning behaviours in the workplace: The role of high-quality interpersonal relationships and psychological safety,” Systems Research and Behavioral Science, 26, 81–98. http://dx.doi.org/10.1002/sres.932. Edmondson, A. C., & Bransby, D. P. (2023). “Psychological safety comes of age: Observed themes in an established literature,” Annual Review of Organizational Psychology and Organizational Behavior, 10, 55-78; Liu, W., Song, Z., Li, X., & Liao, Z. (2017). Why and when leaders’ affective states influence employee upward voice,” Academy of Management Journal, 60(1), 236–263. https://doi.org/10.5465/amj.2013.1082; "Google's Quest to Build the Perfect Team," Charles Duhigg, New York Times (2016); "Creating a Psychological Safety Climate in Teams," Harvard Business Review (2015); "Empathy in Teams: Antecedents, Consequences, and Mediating Mechanisms," Journal of Management (2017); "The Impact of Empathy on Team Creativity and Innovation," Journal of Creative Behavior (2015).