Talent Suiteを活用したジョブ型人材マネジメントの高度化

  • 多くの日本企業においてジョブ型の人事制度への移行が進んでいます。これと併せて、統合型人事システムの導入を検討される動きも盛んです。これらの動きはデータドリブンの戦略人事を実現し、事業戦略の変化に対応する柔軟な組織設計や社員エンゲージメントの向上を図る狙いがあります。一方で、ジョブ型人材マネジメントへの転換において多くの日本企業に共通する課題も見えてきました。
  • 以下に、ジョブ型人材マネジメントへの転換を効果的に実施するうえで求められる『変革の観点』をご紹介します。

 

《ジョブ型人材マネジメント高度化に向けた『変革の観点』》

【①組織設計における属人性の排除】

【②ジョブの標準化とアップデート】

【③スキルギャップの特定と解消】

【④人材マネジメントに関するプロセスの統合】

 

【①組織設計における属人性の排除】

  • ジョブと組織の設計において、現職社員の役割を基準とすることが多く、結果として、属人的な要素を多く含んだジョブ体系をもとに組織設計を進めている事例が散見されます。
  • このままですと、社内に複数の類似ジョブが併存することとなり、経営戦略の実行に必要なジョブの過不足が見えにくく、人材育成や外部採用の要件が複雑化する等、必ずしも最適な状態とはいえません。
  • この状態から脱却する一つのアプローチが『属人性の排除』です。経営戦略の実現に必要となるジョブをトップダウンで設計することにより、どの分野にどのような職務が求められているか(ジョブ)、それぞれの職務を遂行するうえでどのような専門性が求められるか(質)、どれくらい必要か(量)、を明確にすることにより、社内組織とジョブを体系的に整理することが可能となります。(図1)
[図1:トップダウンの組織設計] [図1:トップダウンの組織設計]

 

【②ジョブの標準化とアップデート】

  • 前述のように、ジョブが個別の業務単位で定義されている状態では、組織改編に合わせて組み替えるジョブとそれを担う社員の再配置の検討が難しくなります。ジョブは分割・統合できますが、人はそうはいきません。
  • このままですと、経営戦略の変更にジョブの更新や適材の配置が追い付かないため、できそうな社員がいくつもの役割を兼務するといった「人」基準の人材マネジメントになり、ジョブ型の人事制度が形骸化してしまうことになりかねません。
  • このような事態を回避するためには、タレントマネジメントの『共通言語』として「ジョブ」を設計することが解決の糸口になります。ジョブは経営戦略によって変わるべきものという前提を置き、できるだけ標準的な内容で体系化することが肝要です。そうすることで、経営戦略やビジネスモデルの変化に合わせたジョブを設計することが可能となり、且つ、社外人材との比較や報酬水準の外部競争力の検証、キャリア開発計画やキャリアパスの設計、後継人材の識別や配置といった各施策が連動したタレントマネジメントが可能となります。(図2)
[図2:ジョブの標準化] [図2:ジョブの標準化]

 

【③スキルギャップの特定と解消】

  • 経営戦略の実行に必要なジョブとそれを担う人材に求めるスキル等の人材要件と要員数を定義する、いわゆる「人材ポートフォリオ」の考え方が注目されています。これを起点に採用や育成、配置といった個々の人事施策を連動させることで戦略的な人材マネジメントが可能になります。一方で、ジョブに求められる人材要件(スキル・コンピテンシー・知識・性質・経験等)が定量的に定義されていなかったり、同一職種でも事業部ごとに異なる定義がされていたり、といった事例が散見されます。(図3)
[図3:スキルギャップの特定と解消] [図3:スキルギャップの特定と解消]
 
  • このままでは、経営戦略の実行に必要な要員の過不足や現職社員のスキルギャップの把握に多大な工数を割くことになります。また、スキルギャップを解消するための打ち手も具体性を欠き、施策の効果が半減してしまいかねません。
  • また、「スキル」を定義する際、ジョブに求められる適材の「内面特性」を見落としている事例も少なくありません。ジョブに求められる「内面特性」とは、その職務を全うするにあたり、どのような思考や行動ができる人材であればパフォーマンスを最大化することができるか、という当該ジョブにおける「ハイパフォーマー」の要件を指します。(図4)
[図4:人材特性の可視化] [図4:人材特性の可視化]
 
  • 例えば、同じ先進的なデジタルスキルを習得した社員が2人いる場合、一人はフロント領域の開発案件では成果を挙げるのに対し、基盤領域に配置された社員のパフォーマンスが上がらない、といったことが起きかねません。これは、ジョブの性質によって求められる「内面特性」が異なることが原因の一つと考えられます。
  • ジョブの性質に応じたスキルを定義することにより、社員一人ひとりの強みを活かした適所適材が可能になります。また、社員の立場からは、フィット感の高いジョブに配置されることにより高い「やりがい」を得ることができ、結果として組織全体のエンゲージメントが向上し、活き活きとした職場カルチャーを創り上げることにもつながります。

 

【④人材マネジメントに関するプロセスの統合】

  • 多くの日本企業では、人事部の部内組織が機能別に区切られています。各人事機能(採用/配置/育成/評価など)単位で企画・運用が専門分化されることにより、それぞれの領域で蓄積された深い知見に基づく施策の実行が可能となる点でメリットがあります。一方で、社員の立場から各施策横断で一貫した施策になっていない場合には、キャリア成長に向けた体験価値が分断されてしまい、結果としてエンゲージメントに課題を残す事例も散見されます。
  • 例えば、育成施策の一つとしてキャリアデザイン研修を受講し、社内でのキャリア成長に向けた目標設定を行います。社内公募にも手を挙げ、キャリア目標を会社に伝えます。一方で、定例異動の辞令にはキャリア目標が反映されず、人事部や上長から具体的な説明がない、といったケースが実際に起こっています。このような社員体験が続くとエンゲージメントが下がり、パフォーマンスが上がらないだけでなく、優秀な人材の社外流出を招きかねません。
  • こうした事態に陥らないように、ジョブを基準として組織を設計し、要員計画を策定し、計画的に育成・配置する、内部育成が難しいジョブには外部人材を獲得する、社員は自身の強みを把握しキャリア目標を設定する、上司は部下のキャリア目標を実現するために必要な施策を助言する、といった一連の施策を機能横断で設計・運用していくことが肝要です。
  • 人事機能横断で人事オペレーション全体を設計・運用することにより、データドリブンの戦略人事を確立していくと同時に、社員のキャリア成長とエンゲージメント、延いてはウェルビーイング向上を実現することが可能になると考えています。(図5)
[図5:人事オペレーションの統合化] [図5:人事オペレーションの統合化]

 

[Talent Suiteを活用したジョブ型人材マネジメントの高度化]

  • これらのジョブ型人材マネジメントの実践における課題に対応するソリューションとして、弊社は『タレント・スイート(Talent Suite)』を開発し既に多くのグローバル企業に提供を開始しています。日本においても、いくつのモジュールを利用いただいているクライアント企業が増えてきています。
  • Talent Suiteは、ジョブの設計・管理を行う『SuccessProfiles/Profile Manger』を中核モジュールとして、組織設計・管理を行う『Architect』のほか、社員の人材特性を定量的に把握する『Assess』等、全10モジュールで構成されるSaaS型のアプリケーション群です。ジョブ・組織の標準化を促進し、ジョブと社員スキルとのマッチングを通し、データドリブンの人事オペレーションの確立を支援するソリューションとして活用することが可能です。各機能の概要はこちらを参照ください。(図6)
[図6:Talent Suiteの提供価値] [図6:Talent Suiteの提供価値]
 
  • 弊社は、「Talent Suite」の提供により、貴社におけるジョブ型人材マネジメントへの転換を強力に支援します。

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