事業を成長させる営業組織カルチャー変革「4つのカギ」

2025年1月14日に開催されたイベント「Next Enablers 2025」のパネルディスカッション「事業を成長させる営業組織カルチャー変革『4つのカギ』」では、営業環境の変化とその対応策について深い議論が行われました。本記事では、その内容を振り返りながら、営業組織の変革に向けた具体的な内容をご紹介します。

 

営業環境の変化

近年、営業環境は大きく変化しています。グローバル全体で業界を問わず約500社の買い手・売り手に対して行った当社の調査から以下のような現状が明らかになりました。

  • 顧客の購買プロセスの変化:66%の営業担当者が「顧客が躊躇している」と回答しています。マシュー・ディクソン氏の基調講演でも触れられたように、顧客は間違いを恐れ、購買決定を先送りにする傾向が強まっています。
  • 意思決定者の増加:一つの案件に関わる意思決定者の数はパンデミック以前の4–6人から現在では6–8人に増加しています。他の調査では11人という結果も出ています。
  • 顧客が意思決定しない:フォーキャスト案件の35%において、顧客による意思決定が行われなかったという結果が出ています。
  • 営業に対する期待の上昇:当社の調査では、79%の顧客が「現在の営業は期待を満たしているが、期待を超えることはない」と回答しました。
  • 情報収集の容易さ:ネットやAIの発展により、顧客は必要な情報を自ら収集し、見積もりなどの購買段階に入って初めて営業に連絡を取るケースが増えています。

このような厳しい営業環境において、顧客の期待を超えるためには新たなアプローチが求められています。

 

顧客の期待を超える「パースペクティブセリング」

「パースペクティブセリング」とは、顧客に新たな視点や気付きを与え、顧客の問題解決を支援するアプローチです。「プロダクトを売る」ではなく、「顧客の成功を支援する」というマーケットイン型の思考が重要となります。

パネルディスカッションでは、この考え方を実現するための取り組みと課題について以下の事例が紹介されました。

  • 株式会社荏原製作所(宮木貴延氏)
    • 従来の石油・ガスから脱炭素や新エネルギー分野へのシフトにおいて、顧客自身が課題解決の方法を模索している状況。
    • お客様と伴走し課題を解決していくためには、より上流の方々にお会いし議論を重ねる必要があると感じており、そのためには適切な示唆を提供できるセリングモデルの構築が鍵だと考えている。
  • 富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社(村田耕一氏)
    • 従来の3C(お客様、自社、競合)から「逆3C」(お客様のお客様、ビジネス、競合)への視点転換を全社で推進している。
    • お客様目線を徹底することで課題の明確化を図る。

 

事業を成長させる営業組織カルチャー変革「4つのカギ」

営業組織のカルチャー変革を成功させるための4つの要素が以下の通り明らかになりました。

マーケットイン型思考を組織全体に浸透させるための基盤。

  1. メソッドとスキル
    • トップセールスだけでなく、全員が同じ行動を取れるようプロセスを型化。
  2. コーチング
    • 管理職層による一貫した指導が、マインドセットの定着を促進。
    • メソッドに基づく一貫した日々の指導が行動変容をもたらす。
  3. テクノロジー
    • 方法論とスキルを補完し、効率化を支援。

 

宮木氏は「一貫性を保つため、まずはメソッド・スキルセットの確立が重要」と述べ、村田氏も「約60%を占めるミドルパフォーマーのパフォーマンスを上げ、組織全体を強化するためには、4つのカギの強化を同時に進めることが不可欠である」と強調しました。

 

組織診断アセスメント(The Sales Relationship Matrix™)

当社では、営業組織の現状を可視化するためのアセスメントを活用しています。

  • 縦軸:顧客との関係性。
  • 横軸:組織が行動プロセスをどの程度実践できているか。

この診断結果からも、好業績企業はマーケットイン型思考のマインドセットを基盤に、組織的な行動プロセスを構築・運用していることがわかりました。

実際に我々の調査からもSRP Matrixのレベル1よりもレベル3に分類される企業が各種営業指標においてパフォーマンスが高いことが見えてきています。この結果からも、4つの「カギ」のうち「メソッドとスキル」「コーチング」でプロセスを構築した後、「テクノロジー」で運用を徹底していくことが「人財・マインドセット」の変容にもつながっていることが見えてきます。この点ではなく線で繋いだアプローチが組織カルチャー変革と事業成長を遂げる上で好ましいアプローチの一つかもしれません。

関連記事