コーン・フェリーが生み出した組織・人事のコンセプト

  • コーン・フェリーは、組織・人事コンサルティング分野において、現在、グローバルスタンダードになっている数々のコンセプトを産み出してきました。
  • 人材の能力を評価する基準として流布しているコンピテンシーや、心の知能指数として知られているEQ(Emotional Intelligence)などは 、当社が世界で初めて開発し、提唱してきたコンセプトです。
  • 行動心理学の世界的な権威であるハーバード大学のデイビッド・マクレランド教授や、エドワード・ヘイといった先駆者たちの、社会的な課題を人材の力によって解決したい、という強い思いに支えられてこうしたコンセプトが次々に誕生してきました。
  • 先駆者たちの「組織と人の力を信じ、その力を最大限に引き出すことで社会に貢献する」という信念は、現在でも当社のDNAとして息づいています。
 
  1. ヘイ・ガイドチャート法 -仕事を評価して人の処遇を決める-
  2. コンピテンシー -人材を測る物差し-
  3. 動機 -人の動機を診断する-
  4. リーダーシップと組織風土 -社員の動機と組織業績を左右する因子-
  5. EQ -心の知能指数-
  6. 70:20:10の法則 -学びの黄金率-
  7. 経営トップチーム -経営チームの生産性を科学する-
  8. BARS(行動評価基準) -主観を排した画期的な評価手法-
  9. ラーニング・アジリティ -優れたリーダーは学びが速い-
  10. リーダーシップ・ポテンシャル -有能なリーダーになれる可能性-
  11. ホール・パーソン・アプローチ -全人格的に人材を見る-
 
  1. ヘイ・ガイドチャート法 -仕事を評価して人の処遇を決める-
ヘイ・ガイドチャート法は、同一労働・同一賃金の政策や、グローバル化によって再び脚光を浴びている職務評価の手法です。世間ではヘイ・システムという名でも呼ばれています。その歴史は古く、1950年代にアメリカで公民権運動が展開された時期に、コーン・フェリーによって開発されました。肌の色に関わらず、同じ仕事をしているのであれば同じ処遇を受けるべき、といった均等処遇の思想がその根底には流れています。仕事の大きさによって人の処遇を決める“職務型の人事制度”を設計するために、世界各国でヘイ・ガイドチャート法は使用されてきました。人事を専門とするコンサルティング・ファームの殆どが同種の手法を持っていますが、全てこのヘイ・ガイドチャート法を起源とするものです。
  • ヘイ・ガイドチャート法は、エドワード・ヘイが産み出した職務評価手法です。
  • エドワード・ヘイは銀行家時代に、当時のアメリカ社会における、肌の色が違うだけで同じ仕事をしているのに処遇が異なる実態に強い問題意識を持っていました。
  • アメリカ社会にはびこっている、この不平等な処遇システムを改革しようと、年齢・性別・家柄・人種に関わらず、その人が担う責任に応じて人を処遇するという、職務型人事制度のコンセプトを打ち立て、ヘイ・ガイドチャート法の発案に至りました。
Edward N. Hay(エドワード・ヘイ)

  1. コンピテンシー -人材を測る物差し-
コンピテンシーは人材を測定する物差しとして、人事の世界ではグローバルな共通言語になっています。人事評価の中に組み込まれたり、人材のアセスメントをする際の基準として至るところで使われています。 コンピテンシーの概念は、産業心理学の世界的な権威であった、ハーバード大学のデイビッド・マクレランド教授の手によって1960年代~1970年代にかけて考案されました。 マクレランド教授はコンピテンシーのコンセプトを生み出した後、コーン・フェリー(旧ヘイグループ)に参画して、あらゆる業界・業種で適用可能なコンピテンシーの調査研究を進めました。現在、コーン・フェリーが有しているコンピテンシーは、こうした長年の実証研究によって磨きをかけられたものです。
  • デイビッド・マクレランドはハーバード大学で行動心理学をリードした著名な教授で、コーン・フェリー(旧ヘイグループ)に参画してリーダーシップ開発分野の実質的な創業者となりました
  • 1970年代にマクレランドは、アメリカ国務省から活躍する外交官の要因についての調査依頼を受けます
  • マクレランドたちは、学力や知能以外に活躍するための要因があるのではないか、という仮説を持って調査研究を進め、活躍できるか否かは思考と行動の特性にかかっていることを突き止めました
  • ある仕事で高い業績を上げるために必要な思考と行動の特性、これをコンピテンシーという概念に昇華させたのです
David McClelland(デイビッド・マクレランド)

  1. 動機 -人の動機を診断する-
ハーバード大学のデイビッド・マクレランド教授は、コンピテンシーだけでなく、仕事の成果を大きく左右する人間の動機についても研究を行いました。その結果、仕事に大きな影響を及ぼす動機要因が3つあることを特定しました。この研究成果は、「マクレランドの欲求理論」として広く知られており、モチベーション研究の金字塔になっています。 マクレランドは、3つの動機要因を診断する方法を開発しようと熟慮を重ね、マレーの社会的動機とTATにヒントを得て、“Picture Story Exercise”と呼ばれる診断手法を生み出しました。 通常、人間は理性で自己の行動をコントロールしていますが、多くのプレッシャーを受けると理性が効かなくなり、動機に直結した行動を取る傾向が高まります。例えば、大企業の経営者ともなれば、社外からの業績向上の圧力、社内で起こる諸課題への対応で、常に緊張状態に置かれることになります。 Picture Story Exerciseによる動機診断は、経営者選抜のアセスメントで良く使用されますが、これは経営者になった際、リスクとなる行動を取る危険性を予測するためです。

動機診断の手法(Picture Story Exercise)

以下の様な絵を見て想起した物語を記述し、その内容を専門訓練を受けた分析官が「達成、親和、パワー」の3つの動機で評価

  1. リーダーシップと組織風土 -社員の動機と組織業績を左右する因子-
リーダーシップや組織風土という言葉は、企業経営の中で頻繁に使われています。しかし、それらが本当に意味するところや概念について、正確に語れる人は少ないのではないでしょうか。 デイビッド・マクレランド教授と、ハーバード大学でマクレランドの生徒だったジョージ・レットウィン、ロバート・ストリンガーは、組織の構成員の動機は、その組織の風土に大きく影響を受けることを実証研究によって突き止め、研究成果を世に初めて発表しました。 また組織風土は、その組織を率いるリーダーのマネジメントのスタイル(マネジメントの仕方)によって形作られることも発見しました。即ち、リーダーがその組織の風土を作り上げ、社員の動機ひいては組織業績を大きく左右することを立証したのです。 リーダーシップと組織風土という、企業経営で極めて重要でありながら曖昧模糊としている因子をコントロール可能なものにするため、マクレランド教授たちはその両者を定量的に測定する手法の開発を推し進めました。こうして生まれたリーダーシップ・スタイル診断と組織風土診断は、現在でも組織開発やリーダーシップ開発で効果的に使われています。
リーダーシップ・スタイルの類型

(リーダーがどのように部下に方向性を示し、働きかけ、評価・育成しているかに関するスタイルの類型)

指示命令型いつまでに、何をやるかを細かく指示し、進捗をチェック
ビジョン型「なぜ、その仕事が必要なのか」を背景や関連情報も含めて理解させる
関係重視型本人や家族の状況を気にかけ、情緒的な関係、人と人とのつながりを重視
民主型メンバーから意見を吸い上げ、意思決定の際に衆知を結集させる
率先型仕事の進め方を行動で示し、困難の際には自ら対応する
育成型多少時間がかかっても、部下の成長を優先し、相手に合わせて指導やフィードバックを行う
 
組織風土の評価軸

(リーダーがマネジメントの結果として作り出す、組織の一体感や雰囲気、仕事のし易さ、働き易さなどを評価する軸)

方向性の共有組織の向かうべき方向性や、その中で期待される役割を明確に理解している度合い
基準の明示高い目標、よりよい仕事を追求しようという意識が組織内に浸透している度合い
当事者意識部下が、裁量を与えられ、当事者意識を持てている度合い
評価・処遇職員の貢献が上司から適正に評価されているかどうか等、人事評価制度の運用に対する納得感の度合い
組織の柔軟性同僚や他部署と、状況に応じて柔軟に連携できるかどうか等、仕事を実行しやすい環境が整備されているかどうかの度合い
組織の一体感組織内に一体感があるかどうか、部下が組織に対してコミットメントを感じている度合い
 
  1. EQ -心の知能指数-
1996年に日本でダニエル・ゴールマン著『EQ-こころの知能指数』が発売されるとベストセラーになりました。 EI (Emotional Intelligence)とは「自分自身の感情や周囲の人の感情の動きを理解、認識し、自己を動機づけ、そして自分や周囲の人の感情を効果的にマネジメントすることで建設的な関係を築く能力」のことを言います。IQの高い人が必ずしも仕事で成果をあげたり人生で成功を収めたいりしているわけではありません。それは社会生活や会社生活を円滑に進める上では、自己認識や対人理解といった関係性能力が大きく、自身や周囲にポジティブな影響を与えることが重要だということを示唆しています。 この理論はダニエル・ゴールマンと当時コーン・フェリー(旧ヘイグループ)のリチャード・ボヤツィスを中心に開発されました。ダニエル・ゴールマンとヘイグループが共同開発したEIは、企業だけでなく自己啓発に余念がない個人にも世界中で流行しました。 EIはコンサルティングの現場における実践的なアプローチに加え、アカデミックな分野でも有効性が検証されています。グローバル化が進み、価値観や背景の違う人たちとの協働が増える近年、EIに再び注目が集まっています。 ※本来EIだが、IQに対比する概念として提唱されたため、日本や米国ではEQ(Emotional Intelligence Quotient)と呼ばれることが多い。

Daniel Goleman(ダニエル・ゴールマン)

元ニューヨークタイムズのジャーナリスト。ハーバード大で心理学の博士号を修め、脳神経学の学術的裏づけを元にIQ重視の世の中に警鐘を鳴らし、EIを提唱。著書に『EQ―こころの知能指数』(講談社刊)など。現在もコーン・フェリーと提携し、定期的にKorn Ferry Instituteに寄稿。

Richard E. Boyatzis(リチャード・ボヤツィス)

組織行動、心理学、認知科学の世界的権威。元ヘイ・マクレランドセンター共同研究者で、コンピテンシーの実証的な体系を作り上げる。著書に『EIリーダーシップ』(日本経済新聞社刊)など。

EQ関連書籍

  1. 70:20:10の法則 -学びの黄金率-
70:20:10の法則という名前を聞いたことがある方は多いかもしれません。この法則は、1980年代にCenter for Creative Leadershipの所長モーガン マッコール、研究所長マイケル・ロバンルド、コンサルタントのロバート・アイヒンガーの3人による実証研究が基になっています(マイケル・ロバンルドとロバート・アイヒンガーの二人は、コーン・フェリーの源流の1つであるコンサルティング会社、ローミンガーを設立しました)。多くのエグゼクティブを対象に自身がどうやって学びを得てきたかを調べた結果、成功している経営者たちは大まかに言って70%が職務、20%がコーチングなど人を通じて、10%が研修プログラムや読書といった座学から学びを得ていることが明らかになったのです。これをロンバルドとアイヒンガーは後の1996年に『Career Architect Development Planner』を通じて世に出したことで、この法則は一般に知られるようになりました。 今では色々な事業会社やコンサルティング・ファームが、理想的な学習配分を示すものとして70:20:10の法則を金科玉条のごとく推奨している例も見られます。しかし、ここには留意すべき点があります。例えば、ビジネス書を読んでそれを職務で実践した、人から職務でフィードバックを受けて改善した、といったように、真に効果的な学びには職務、人、座学の3要素は不可分だと言えます。最も学習効果が高いのは職務ではあるものの、だからといってコーチングや研修を軽視していいわけではなく、むしろ積極的に行ない、そこで得た学びをどう職務で活かすかという相互の連動性が重要となるのです。

Career Architect Development Planner

  • マイケル・ロンバルドはCenter for Creative Leadershipの研究所長を15年にわたって務め、ロバート・アイヒンガーはかつてPepsiの組織開発トップを務めた国際的にも著名なコンサルタントでした
  • 二人の名前を取った人材コンサルティング会社Lominger(ローミンガー)は1991年に設立されました
  • ローミンガーは、67のコンピテンシーから構成されるLeadership Architect(グローバル・コンピテンシー・モデル)、Voices、Choices(いずれも360度多面評価)、Success Profileなど、実証的・科学的アプローチのHRツールを多数発表し、事業会社のHRを支援しました
  • ローミンガーは2006年にコーン・フェリーの傘下に入り、同社がエグゼクティブサーチ以外のリーダーシップ開発や人材コンサルティング分野へと進出する嚆矢となりました
  1. 経営トップチーム -経営チームの生産性を科学する-
経営トップチームというコンセプトは、日本ではあまり耳慣れないものかもしれません。しかし、経営環境が複雑化し企業トップ一人の力では舵取りが難しくなっている昨今、経営がチームとして有効に機能する重要性を指摘する日本の経営者が増えてきています。 ハーバード大学の教授であるリチャード・ハックマンと、当時コーン・フェリー(旧ヘイグループ)の研究員であったルース・ワーグマンたちは、CEOを中心とした企業のトップチームが、有機的かつ効果的に機能するための条件について研究を行いました。 2000年代の初頭、長年にわたる調査の結果、生産的に機能している経営チームには、明確で心に響く目的が共有されていること、適切な意思決定構造が組まれていることなど、6つの共通条件が存在することがわかりました。経営会議などに代表される、日本企業における経営トップチームの生産性を高めるにあたり、 彼らの研究成果は大きな示唆を与えてくれます。

Richard Hackman(リチャード・ハックマン)

  • リチャード・ハックマンは、ハーバード大学の社会・組織心理学の教授でした
  • ハックマンはチーム研究の第一人者として、チームのダイナミクスとパフォーマンス、リーダーシップの有効性などを主なテーマとして研究を行ってきました
  • ハックマンの研究成果は、アメリカ心理学会の組織心理学部門で顕著な貢献を称える章を受賞した他、アメリカ経営学会の優秀学者賞も受賞しています
  • 2004年に発表した『Leading Teams』は、その年の最も優れた経営書に贈られるアメリカ経営学会テリー賞の栄誉に浴しました
  1. BARS(行動評価基準) -主観を排した画期的な評価手法-
自己回答形式であれ、他者評価形式であれ、アセスメントにおいては主観的・恣意的な回答をいかに排除するかが永年の課題となっていました。例えば「東京は雨が多いですか?」という質問に対し、雨が多いことで有名なバンクーバー出身者は「少ない」と答えるでしょうし、砂漠地帯の出身者は「非常に多い」などと答えるでしょう。このように回答者側の主観によって適正な評価ができないのです。そこで、コーン・フェリーの源流の1つであるPDIの研究者たちが着目したのが、1960年代から応用心理学分野で研究が進んでいたBARSという手法です。これはBehavioral Anchored Rating Scaleの略で、日本語では行動評価基準と訳されます。雨の例で言えば「年間○○ミリ以上」と明確な雨量を明示することで評価のブレをなくすことができるように、具体的な行動を記述し、それに当てはまるスケールを選択させることで主観的・恣意的回答を排することに成功したのです。一般的な選択式回答よりも正確な評価ができるようになったことで、個人同士のアセスメント結果を比較することも可能になりました。 それまでは回答が主観的であることを理由に、アメリカでは労働組合の反対により360度多面評価を業績評価に使用することはできませんでした。2006年に発表さたTalentView of Leadership PerformanceはBARSを用いて客観性が担保されたことで、初めて業績評価に使用可能な360度多面評価ツールとなり、同年のHR Award of the Yearを受賞しました。

  1. ラーニング・アジリティ -優れたリーダーは学びが速い-
不確実性が高まっているビジネス界においては、昨日までの成功法則が明日には通用しなくなっていることが往々にしてあります。ビジネスリーダーはかつて誰も経験したことがない、正解のない課題に取り組むことになります。そんな中でも優れたリーダーは、経験から素早く学び、その学びを初めての状況にも応用することで高い成果をあげていきます。これがラーニング・アジリティで、「学習機敏性」などとも訳されます。ラーニング・アジリティは、多少は後天的に習得可能であるものの、どちらかといえば生来の資質に近いとされています。 コーン・フェリーの研究機関では、ラーニング・アジリティこそがリーダーに重要な資質の一つであることを突き止め、2010年代の初め頃からこのコンセプトを提唱してきました。ラーニング・アジリティは、世界最大の人材開発会議ATDでも主要テーマとして取り上げられたほか、多くのグローバル企業で採用時に最も重視する項目の一つになっていたりと、そのコンセプトは世界的に浸透してきています。
  1. リーダーシップ・ポテンシャル -有能なリーダーになれる可能性-
人材のポテンシャルという言葉は、非常に使い勝手が良く手垢のついた言葉です。ポテンシャルは概して、将来の伸びしろや潜在力といった、今は顕在化していないものの、先々にある大きな可能性を意味しますが、明確な定義はありませんでした。 コーン・フェリーでは、ポテンシャルを「有能なリーダーになれる可能性あるいは確度」と定義づけ、企業の中でリーダーとして高い成果を上げる可能性が高い人材の特徴を発見しました。近年、コーン・フェリーは膨大な調査結果を基に、リーダーとして育つための因子を7つのカテゴリーに分類しました。このリーダーシップ・ポテンシャルのコンセプトは、欧米のグローバル企業では経営者のサクセッションにおいて1つのスタンダードになりつつあります。 これまでとは異なる戦略を採用し、グローバル競争に勝っていかなければいけない日本の企業にとって、次世代経営者のサクセッションは大きな課題となっています。リーダーになれる素養を持った人材を早期に見極め、計画的な育成を施していく上で、ここ日本でもリーダーシップ・ポテンシャルに対する需要が大きくなっています。

有能なリーダーになれる可能性を規定する7つの因子

ラーニング・アジリティ
  • 経験からどの程度学び、その教訓をどの程度応用できるか
経験
  • より上位のリーダー職に役立つ経験をどの程度有しているか
自己認識力
  • 自分の強みや弱みをどのように認識しているか
論理や推論の思考力
  • 難しい概念をどれくらい素早く正確に理解できるか
原動力
  • さらに上の責任や課題を引き受ける機会に対して、どれ位の意欲を持っているか
リーダーシップ特性
  • その人の行動が組織における良いリーダーの条件にどの程度合致しているか
阻害リスク
  • その人のキャリアにはどの程度のリスクがあるか

  1. ホール・パーソン・アプローチ -全人格的に人材を見る-
将来のリーダー候補となる人材を選抜する際、業績と行動(あるいは能力)の2軸で人材を議論するやり方が一般的でした。俗に、9Boxとして有名な人材レビューの枠組みです。シンプルでわかり易い枠組みではあるのですが、 9Boxには問題もありました。業績も行動も優れている人物を選抜したものの、本人に実はリーダーになる意志が全くなかったというケースや、現在のプレイヤーとしては好業績者でも、リーダーとして人を率いることには全く興味を持てないなど、リーダー選抜の枠組みとして完全ではなかったのです。 そこでコーン・フェリーは、業績と行動という顕在化した要素だけでなく、より潜在的な性格や動機も含めて、人材を全人格的に捕らえるフレームワークを開発しました。これをホール・パーソン・アプローチと呼び、2010年代初頭から提唱しています。ホール・パーソン・アプローチでは、「性格特性」「動機づけ要因」という先天的な要素と、「コンピテンシー」「経験」という後天的な要素を可視化することで、より包括的な人材の議論を可能にします。現在では、多くの企業がホール・パーソン・アプローチでリーダー選抜と育成の仕組みを組み立てています。

関連記事